【独自インタビュー】蘭寿とむ、『101ダルメシアンズ』で“世紀の悪女”クルエラに挑む「“ザ・悪”だけじゃない」

蘭寿とむが、新妻聖子とのWキャストで“世紀の悪女”クルエラ・ド・ヴィルに挑む。ミュージカル『101ダルメシアンズ』が2026年10月13日から東京・日生劇場、11月7日から大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。2022年にロンドンで初演され、英国各地を回ってきた作品の日本初演だ。訳詞・翻訳・演出は石丸さち子。英国クリエイティブチーム監修のパペットによって、個性豊かな犬たちが舞台上に登場する。

蘭寿とむと新妻聖子の写真

公開された公演ビジュアルでは、赤い口紅とロンググローブのクルエラが、本物のダルメシアンの子犬を抱えている。誰もが憧れるファッショニスタでありながら、自分にしかまとえない一着のために子犬を99匹さらう女。元宝塚歌劇団花組トップスターの蘭寿にとって、ここまで振り切った悪役は初めてだという。

――台本や楽曲に触れてみて、これまで持っていたクルエラのイメージと違うところはありましたか。

絵本で読むクルエラとか、ディズニーアニメで見る『101匹わんちゃん』の世界のクルエラって、ただただ悪くて。「こういう大人になっちゃいけませんよ」みたいな、“ザ・悪”という感じですよね。でも今回はそれだけじゃない。ファッショニスタで、誰もが憧れるクルエラから始まりますが、「唯一無二のものが欲しい」「自分にしかまとえない毛皮のコートが欲しい」というすごく強い欲望が描かれている点が、今回のポイントだと思いました。
最後も、本当に“ザ・負け”だけではなくて、クルエラなりの美学が描かれている。そこは大きく違うかなと思います。

――ここまでの悪役を演じた経験はありますか。

ここまで振り切った“ザ・悪”、“世紀の悪女”みたいな役はないですね。今も稽古場で「思っているより、もっと大きなもの」と言われているので、大きなスケールで演じられたらと思っています。

蘭寿とむの写真

――宝塚時代に培ったものが生かせそうな部分はありますか。

あります。演出の石丸さち子さんからは、Wキャストの新妻聖子さんとは「全然違う方がやっぱりいいんじゃないか」と言っていただいていて。もちろん個性も違いますし、私は歌稽古でセリフをやっていると、少し穏やかな、優しい部分が出てしまうみたいなんです。クルエラって、本当に自分の意見を押し通すし、誰の意見も聞いていない。でも私は、みんなのセリフをちゃんと聞いちゃうので(笑)。そういう優しい感じよりは、やっぱり“強さ”みたいなものを求められているのかなと思います。そのあたりは宝塚時代のものが生かせるのかなと、今は思っています。

――Wキャストの新妻聖子さんには、どんな印象を持っていますか。

新妻聖子さんと一緒にやらせていただけるんだ、と思ってすごくうれしかったです!実際にお会いしたら、本当に明るくてパワフルで、元気をもらえるんですよね。歌稽古をしていると、やっぱり声の圧が素晴らしくて。「どうやったらそんな高いところまで軽々と出るんだろう?」って思います。こんな間近で聴いて勉強できるのは幸せですし、一緒に話しながら作れるところもありますし、仲良くしてくださるのでありがたいですね。

――公演ビジュアルもかなりインパクトがあります。

ここまで強いメイクもなかなかないですよね。真っ白と黒のカツラに、ゴージャスなお衣装、高いヒールを履いて。舞台に登場してきただけでも、インパクトはすごいと思います。ほかにも衣装がまだまだあると伺っていますし、ナンバーの中で着替えることもあるみたいなので、クルエラのファッションも楽しんでいただけるんじゃないかなと思っています。

――高いヒールを履くと、動きや芝居も変わりますか。

そうですね。やっぱり重心が変わってくるので。でも、クルエラには必須ですよね!やっぱり彼女はぺたんこの靴ではないなと。自分自身も美しいものを身にまとっている、という自信から来るものもあるでしょうし、自分の美のラインやセンスへのこだわりがすごく強い人だと思うんです。セリフの中にも出てくるんですよ。化学繊維のペラペラの服を着てとか、穴の開いた靴を履いてとか。「違うでしょ、美とはこういうものでしょ」という確固たるものを持っている人なんだと思います。そのあたりも表現したいです。

――もう一つ大きな見どころが、犬たちを表現するパペットです。

実際に俳優さんが動かすんです。パペットの表情や動きを作りながら、演じて、歌って、全部やられるので、動かす俳優さんは本当に大変だと思います。今、皆さんすごく練習されていて。歌稽古をしていて思ったんですけど、ワンちゃんの個性が全然違うんですよ。「本当にこういうかわいい子いるよね」という感じの子もいれば、ものすごく気の強いワンちゃんもいる。一匹一匹が全然違うので、そのあたりも面白いと思います。

蘭寿とむの写真

――子どもと大人では、また違う楽しみ方ができそうですね。

そう思います。今回は4歳からご観劇いただけますが、子どもたちはやっぱり、ワンちゃん目線で見ると思うんですよね。「あのワンちゃんかわいい」「応援したい」とか、最後にうまく檻から逃げ出して温かい家庭に戻れたところまで、ワンちゃんたちの気持ちになって見てもらえるんじゃないかなと思います。クルエラはおそらく「本当に憎いよね、あのクルエラ」という感じになると思うんですけど(笑)。でも、そう思われれば思われるほど正解なので、そこまで作り込めたらいいなと思っています。

演じている側としては、クルエラを“悪い”と思って演じているわけではないんです。もちろんやってはいけないことなんですけど、大人の方には「こう思ったから、こうしちゃったんだよね」という人間たちの少し深いところまで感じてもらえたら。スリルもありながら、最後には本当に温かい気持ちになれるミュージカルなので、子どもから大人までそれぞれ違った楽しみ方ができる作品だと思います。

――稽古場では“悪女クルエラ”ですが、家との切り替えはできますか。

もう全然別物です(笑)。お稽古場に入ったら悪女クルエラ。ワンちゃんたちも「クルエラが来たぞ……」みたいな感じでやってくれるので。役として歌ったり、お芝居をしたりすると、急にスイッチが入るタイプだと思います。家には持ち込まないですね。家にクルエラいたら怖いですもんね(笑)。

蘭寿とむの写真

――稽古が本格化していく中で、リフレッシュするときは何をしていますか。

香り系のものは、やっぱりリフレッシュになりますね。最近はロールオンのオイルを使っています。ちょっとスーッとしつつ、香りもいいものとか。湯船にゆっくり浸かれるときは入浴剤を変えるだけでもリラックスできますし、全然違う音楽や映像を見たりもします。そういうもので切り替えていますね。

――最後に、公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

ミュージカル『101ダルメシアンズ』、まず音楽がすごくハッピーなんです。ポップなものもあれば、ちょっとドラマチックなものもあって、いろいろなナンバーを楽しめると思います。ワンちゃんと飼い主さんとの出会いや縁にも、すごく温かいものが流れています。そこにクルエラの“悪”――客観的に見たら間違っているのかもしれないですけど、クルエラにとっては自分の正義でもあって、それを突き通す“美のカリスマ”がどう絡んでくるのか。その攻防戦も楽しんでいただきたいです。Wキャストなので、2回。いえ2回と言わず3回、4回(笑)。ワンちゃんたちも、見るたびに応援したくなる子が変わると思うので、ぜひ劇場でお楽しみください。

ミュージカル『101ダルメシアンズ』
原作:ドディー・スミス
作詞・作曲:ダグラス・ホッジ
脚本:ジョニー・マックナイト
舞台版脚色:ジニー・ハリス
訳詞・翻訳・演出:石丸さち子

出演:新妻聖子/蘭寿とむ(Wキャスト)
村井良大、土井ケイト、鈴木勝吾、川添野愛、島田惇平、永田崇人 ほか

[東京]2026年10月13日(火)~29日(木)日生劇場
[大阪]2026年11月7日(土)~15日(日)梅田芸術劇場メインホール

公演HP

取材・文:entax編集部