東京バレエ団プリンシパル・宮川新大 独自インタビュー 芸術選奨文部科学大臣賞受賞、そして『白鳥の湖』『海賊』への思い
東京バレエ団のプリンシパルとして、国内外の舞台で存在感を放ち続ける宮川新大。昨年、その1年間の活動が高く評価され、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。受賞理由となった『眠れる森の美女』と『ザ・カブキ』の2作品での活躍。そして今シーズンは8月『海賊』、9月『白鳥の湖』、さらに11月には『オネーギン』と、大作が続く。受賞の喜びから、今後の舞台にかける思いまで、entaxだけに語ってもらった。
――芸術選奨文部科学大臣賞の受賞、おめでとうございます。受賞を最初に知った時のお気持ちを聞かせてください。
宮川 あまり最初は、実感がなかったのですが、表彰式の時に初めて実感が湧いてきました。昨年の自分の活動が、こういう形で認めていただけたというのは、ダンサーとしては一番うれしい賞です。頑張ってきて良かったなと思いました。
これまでの積み重ねがこうして評価されるというのは、どこか1つの部分だけが良かったというよりも、自分自身がプリンシパルとして、どの舞台においてもいい踊りの質を保っていたことが評価されたということだと感じています。この1年の伸びしろはもちろん、舞台での成果もあったと思っています。1つの役だけでなく、いろいろな作品で――受賞理由は『眠れる森の美女』と『ザ・カブキ』でしたが、まったく異なる2つの作品がその理由に入っていたことも、ダンサーとしては大きな意味を持つのではないでしょうか。
――長いキャリアを振り返って、どんな意味がありますか。
宮川 自分が生まれ育ったこの日本という地で、文部科学大臣賞という形でダンサーとして評価してもらえた、名前を刻んでもらえたというのは、やはり一番うれしいことです。
――地元での反応はいかがでしたか。
宮川 たくさんのお祝いの言葉をいただきました。これまでの活動を見てくれていたことは、本当にうれしいですね。地元への恩返しをしたいという気持ちがあります。主役をやるときは、お世話になった教室の生徒たちがバスで見に来てくれたりもするので、踊り続けることでバレエへの興味を持ち続けてもらえたら、それが自分にできることかなと思っています。
最近は、子どもたちにバレエを教える機会も増えました。みんながプロのダンサーになれるわけではないかもしれないけれど、そこにむかっていく過程がすごく大事だと思っています。バレエは教わるだけではなくて主体的に練習することも大切です。これは社会に出てからも同じで、だれかに言われたことだけにプラスして自分で考えて行動することが大切だと思っています。
――ドイツにあるジョン・クランコ・バレエ学校に留学されていた宮川さん。11月にはクランコ版『オネーギン』が控えていますね。
宮川 この作品に携われるのは、とてもラッキーなことだと思っています。小さい頃に見たときは難しく感じましたが、経験を積むにつれて作品の良さが一層わかるようになりましたし、自分自身のダンサーとしての成長も感じています。少なからず、作品が生まれた土地にいて、その空気を吸ってきたので、ジョン・クランコさんが大切にされてきたメソッドを、何かしら生かせたらいいなと思っています。
クランコ版の『ロミオとジュリエット』が好きで、マキューシオ役をやりたいとずっと思っていました。その役を実際にやれたときの衝撃は忘れられません。バレエをかっこいいと思ったのはあのときが初めてで、大きな海外の劇場でバレエを観たのも初めてでした。そのときの衝撃がずっと脳裏に焼き付いていて、いつか叶(かな)えたいと思っていた夢が東京バレエ団で叶ったんです。そうして、今回『オネーギン』でタイトルロールを務めることができることが、本当にうれしいです。

――『海賊』は男性ダンサーが活躍する作品ですが、特別な思いはありますか。
宮川 バレエ団の初演から携わっているので、最初に上演したときのことを今でも思い出します。作品自体も育ってきていると感じますし、男性ソリストやプリンシパルも育ってきている、今の東京バレエ団だからこそできる作品です。今の東京バレエ団の勢いに、一番合っているのではないでしょうか。
――『海賊』はガラ公演などでもおなじみの作品ですが、全幕で見られる機会が少ないですよね。
宮川 アメリカンバレエシアターの『海賊』の映像を、擦り切れるほど見ました。男性ダンサーなら、みんな一度は憧れる作品だと思います。僕はイーサン・スティーフェルさんのコンラッドを目指しています。きれいで、スマートで、それでいてワイルドとはまた違う、ノーブルかつリーダーであるコンラッド像に、1歩でも半歩でも近づけたらいいなと思っています。
彼はロイヤル・ニュージーランド・バレエ団にいた頃の監督だったこともあり、リハーサルの映像を本人に送ってフィードバックをもらったりもしました。前回は初役ということもあり悔しい部分もあったので、そこで得た経験を今回に生かせたらと思っています。クラシックの演目で男性が主要なキャラクターを演じる作品は、実はそう多くありません。だからこそ、男性目線で言うと”カッコいいバレエ”だと感じています。
――コンラッドとは、どんなキャラクターですか。
宮川 やはりリーダーなので、船の先頭に立ち、自ら舵を取るような強さを見せなければいけないと思っています。後輩が増えてくる年齢にもなったので、その分、みんなを引っ張っていけたらいいなと思います。

――続いて9月には『白鳥の湖』が控えています。
宮川 作品に対する新鮮さが残っている方がいい舞台になると思うので、集中してリハーサルに取り組んでいます。この2年間で、ダンサーとして一段違うステップに進めたと感じているので、そのリーダー性というか、包容力を王子役に生かしていきたいです。今回は公演回数が多いので、お客様には色々な表現を楽しんでいただけたらうれしいですね。プリンシパルになると主役を務めることが多くなりますが、その中でいかに探求心を持ち続けられるかが大事だと考えています。
――『白鳥の湖』の見どころを教えてください。
宮川 ブルメイステル版『白鳥の湖』の良さを、しっかり出したいと思っています。3幕がすごくスピーディーで、ディヴェルティスマンもとてもかっこいいんです。演出自体が、かっこいいので、ぜひ見ていただきたいですね。

『海賊』と『白鳥の湖』2つの作品はいずれも、東京バレエ団に入ってから、新しいメンバーで作り上げてきた作品です。今の東京バレエ団を代表する演目だと思うので、まったく異なる作品を演じ分けるダンサーのすごさも感じていただきたいですし、主役だけでなく、コールド(群舞)やソリストにもぜひ注目してほしいです。これだけ多くのキャストを組めることはこれまでなかったので、キャスト違いで見比べていただけたら、それもうれしいです。作品の良さと、東京バレエ団の良さを、この機会にぜひ味わっていただきたいと思います。
受賞という1つの到達点を経てなお、次の舞台へと視線を向け続けている。『海賊』『白鳥の湖』『オネーギン』――性格の異なる3作品に、それぞれの役の核心を見つめながら向き合う姿勢からは、プリンシパルとしての矜持と、なお成長を止めない1人のダンサーの誠実さが伝わってくる。今シーズン、東京バレエ団の舞台でその歩みを見届けたい。
【公演概要】
◆海賊
会場:新国立劇場オペラパレス
2026年8月26日(水) 19:00
8月27日(木) 19:00★
8月28日(金) 19:00
8月29日(土) 14:00★
8月30日(日) 13:00
◆白鳥の湖
東京公演
会場:新国立劇場オペラパレス
2026年9月9日(水)18:30
9月10日(木)18:30
9月11日(金)18:30★
9月12日(土)12:30
9月12日(土)18:30
9月13日(日)13:00★
京都公演
会場:ロームシアター京都 メインホール
2026年9月17日(木)18:30★
西宮公演
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
2026年9月19日(土)14:00
堺公演
会場:フェニーチェ堺 大ホール
2026年9月21日(月・祝)14:00
※★が宮川新大さんの出演回
取材・文:和田弘江