「愛おしくて仕方がない」映画初監督の中村雅俊が込めた“特別な50年後” 映画『五十年目の俺たちの旅』【entax独自インタビュー】

1975年10月に放送が始まり、当時の若者たちを熱狂させた青春ドラマの金字塔『俺たちの旅』。その後も『十年目の再会』『二十年目の選択』『三十年目の運命』と、登場人物たちの人生の節目を描き続けてきた本作が、放送開始50周年を迎えた今、20年ぶりに新たな物語として帰ってくる。初の映画化となる『五十年目の俺たちの旅』では、中村雅俊演じるカースケ(津村浩介)たち3人の物語が初めて銀幕に描かれる。主演にして初の映画監督を務める中村が挑んだ本作は、2026年1月9日(金)に全国公開。entaxでは、中村に独自インタビューを行った。

映画『五十年目の俺たちの旅』KV

◆待望の映画化、決め手は「みんな『俺たちの旅』が大好き」

「今回、映画化のお話をもらった時は“きたか!”って感じでした。これまで、10年後20年後30年後をスペシャルドラマで作ってきて、今回は“特別な50年後”。『俺たちの旅』が復活するとなると、“『俺たちの旅』やりたい!”って言いだす人が、俺も含めいっぱいいると思うんですよね」

「脚本家の鎌田敏夫さんからも、一緒にお酒を飲んでいると“『俺たちの旅』をまたやりたい”って言葉が出てくるんです。鎌田さんはほかにもたくさんヒット作があるのに、なぜか『俺たちの旅』が大好きで。映画化は大変な道のりでしたが、みんな『俺たちの旅』が大好きだからですね」

◆監督として“譲れなかった”シーン

「譲れなかったシーンは…あまり言いたくないですけど…(笑)一番感謝しないといけないことがあって。撮影現場では、俺が“やりたい”って言ったことを、プロデューサー含め、皆さん快諾してくれたんですよね。皆さんが反対することなく、ほとんど全員が俺の言った通りのことをやってくれた。それは本当に感謝しています」

「でも最初の本作りの時、鎌田さんが考えたものに俺が“いや、こっちのほうが…”みたいに、より良いものを求めるが故に、鎌田さんと何回も話し合いをしました。でもそれ以外は基本スムーズに作れたと思います。“実はこういうことがあった”というのは公開後、後々言いたいですけど(笑)」

中村雅俊と秋野太作の写真
カースケ(津村浩介/演:中村雅俊)、グズ六(熊沢伸六/演:秋野太作)

◆映画初監督を経験して…

「監督って本当に大変で。全てにおいて一つの答えを出していきながら、前に進んでいかないといけない。だから、答えを出す責任がすごく強くて。例えば、【1+1は本当は2】だけど、監督的に【1+1は3】みたいな答えを出して、それを【3が正解だ】っていうところまで持っていかないといけない。そういう戦いはあったので、ちょっと孤独を感じることもありました。自分が“やろう”って言ったことが正しいかどうか、実はわからないんです。それでも奮い立たせて、とにかく一年間、四六時中映画のことを考えてましたね。貴重な体験をさせてもらいました」

◆公開前の初めての心境「愛おしくて…」

「“お客さん来てくれるのかな?”って思ってるんですけど、この気持ちが本当に初めての経験。不安に似たものがよぎっています。俺は、制作する上で作品を100回以上は見ているので、目を閉じると“このカットの後はこれで”みたいに浮かんでくるんです。“自分の作品”っていう意識が強いので、とにかく気持ちは尋常じゃないです。俺は子どもを産んだことはないですけど、産んだ気持ちになったような、それくらい『五十年目の俺たちの旅』が愛おしくて仕方がない。公開したらもっとそんな気持ちになるのかなって思いますね」

◆「ワンボックスカーに乗れるだけ乗って…」

「ロケ地にも何回も足を運びました。監督ってこういうものだと思ってたんですけど、カメラマンや照明技師、助監督、プロデューサーとか、ワンボックスカーに乗れるだけ乗って行きました。山奥ばっかりなんですよ!(笑)早くて都内から2時間くらいのところにあって、熊出没注意!って書いてあって“ぉお大丈夫か!”とか言いながら…ロケハンはとにかく遠いところばっかり行きましたね。伊豆にある、夕日が日本一素敵と言われているところは3時間かかったりして」

◆監督として向き合えたシーン

「俺くらいの年齢になると“残りの人生、何をしようか”って考える中で、本作では田中健ちゃんが、かつて愛した人の息子がいる島を訪ねるシーンがあるんです。その島のシーンは、俺出てないんですよ。だからすごく楽で(笑)自分が芝居をしない、監督業だけでいたので、すごく集中できたシーンでした。今後、また機会があったら、俳優として出演せず“監督だけってのもいいな”と思った瞬間でもありましたね」

──島から船を見送る“お辞儀のシーン”も印象的
「あのお辞儀は過去作でも使っていた手法なんです。井の頭公園駅に、水戸に住んでいるグズ六(熊沢伸六/演:秋野太作)のすごく厳しいお母さんが来て、駅のホームでお母さんを見送るシーンがあるんです。そこで、カースケ、グズ六、オメダ(中谷隆夫/演:田中健)の3人が軍隊みたいに並んで、電車が見えなくなるまでずっとお辞儀をするんですけど、今回はそれをやろうと思って。昔から見ている方は、“もしかしたらそういうことかな”と気付いてくれると嬉しいですね」

中村雅俊と田中健の写真
カースケ(津村浩介/演:中村雅俊)、オメダ(中谷隆夫/演:田中健)

◆中村雅俊の50年「連続ドラマの主演34本、コンサートは1600回以上」

「去年ちょうどデビュー50年だったので、自分の足跡、輪郭みたいな過去の作品を“自分は一体何をしてきたんだろう”って振り返ってみたんです。…意外と俺いろいろやってるんですよ(笑)“他に俺みたいな人あまりいないんじゃない?”って前に進む発進力になりましたね。数えると、『俺たちの旅』も含め連続ドラマの主演は34本あったんです。1年に1本連ドラの主役をしたら34年かかるってことですよね。これって結構すごくないですか?コンサートも1600回以上やってるんです。“結構やってきたじゃん、俺”って自慢体制になってるんですけどね(笑)振り返ったことで知れたので、こういうのもたまにはいいですね」

◆50周年のその先──

「俺はラッキーなことにいろんなことをやらせてもらったので、“新たに挑戦したい”というよりかは、また海外の映画に出演したいですかね。過去に3作出ているんですけど、1本目の時は約1か月半海外に行きっぱなし、それも通訳なし、マネージャーもいない。とにかくずっと英語をしゃべってないといけなかったんですけど、外国のスタッフしかいない、誰も俺のことを知らない普段と違う環境だったのですごく頑張れたし、結構楽しかったんですよね。機会があれば、またオーディションを受けて海外作品に挑戦したいなと思っています」

「語学は、大学でESS(English Speaking Society)というクラブに入っていて、英語劇のセクションだったので、学生の時はずっと英語で芝居をしていました。当時は英語劇嫌だったんですけど…(笑)海外の作品につながったなとは思いますね」

「大学3年生の時に英語のパフォーマンスがあって、そのディレクターが奈良橋陽子さんで。俺がまだデビューする前、そこで奈良橋さんと出会ったんですけど、妙に俺を褒めるんですよ。“ぇ、なんで?”って思ったんですけど、その気になって文学座を受けちゃって(笑)ものすごい倍率だったんですよ、定員30人なのに1200人くらい受験して、受かるわけないと思いましたね。今では受けてよかったと思います、受かってないと今の姿はないですから」

◆描かれる人生の選択や葛藤…中村雅俊は──

「人生の中で悩むことはあまりないですね。人間ってAかBか、いつも選択に追い込まれていて、Aの道に進むと“Bが良かったかな”、Bに進むと“やっぱりAだったかな”。俺は、これを繰り返すのが人生みたいな気がしていて。悩んだ時は、文学座のお芝居「女の一生」のセリフを思い出します。“誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩き出した道ですもの、間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ”。この言葉がいつも頭の中にあるんです。人間って間違ったなって思う選択も多いけど、努力して出口まで頑張れば、意外とそれが正解なんでしょうね」

◆観客へメッセージ

「『五十年目の俺たちの旅』は人生で初めて違った感覚を持った仕事をして、結果としてすごく楽しかったです。監督として頑張ったからではなくて、『俺たちの旅』って本当にたくさんの人から愛された作品で、そのちょっと特別な50年後── ぜひ見てもらいたいなと思っています。よろしくお願いします」

映画『五十年目の俺たちの旅』
2026年1月9日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
【予告編はこちら】

中村雅俊と田中健と秋野太作の写真

<出演>中村雅俊 秋野太作 田中健 / 前田亜季 水谷果穂 左時枝 福士誠治 / 岡田奈々
<原作・脚本>鎌田敏夫
<監督>中村雅俊
<主題歌>「俺たちの旅」中村雅俊
<配給>NAKACHIKA PICTURES ©️「五十年目の俺たちの旅」製作委員会

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公式Instagram

取材:entax編集部
写真:entax
場面写真:©「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
ヘアメイク:鈴木佐知
スタイリスト:奥田ひろ子