63歳で脱サラ&年金を注ぎ込み開拓! 小泉純一郎の“食育論”に感銘を受けた89歳職人が生んだ“奇跡の梅干し”
ヒロミと小泉孝太郎の2人がMCを務める『オー!マイゴッド!私だけの神様、教えます』が10月10日に放送。89歳の梅干しの神様が作る梅干しづくりに密着した。
89歳の梅干しの神様とは?
道行く人に“自分だけの神様”を聞き、実際に会いに行くこの番組。東京・日本橋で声をかけた国産梅干し専門店の女性の神は、梅干しを作っている富山県の『氷見稲積梅(ひみいなづめうめ)』の創業者、長澤誠尚(ながさわ・じょうしょう)さん。89歳という年齢ながら、今も現役で梅づくりのすべてを自らの手で行う“梅干しの神”だ。
梅といえば国内生産量1位は和歌山県。一方、長澤さんが梅を育てる富山県は全国42位(※果樹生産出荷統計【農林水産省】より)。梅の産地としてはほぼ無名と言っていい。それにもかかわらず、『氷見稲積梅』は全国の食通から注目を集め、『成城石井』でも販売されるほどの人気商品となっている。さらに2022年には、北海道の“夕張メロン”と並び、地域ならではの高品質ブランドを国が認めるGI(地理的表示保護制度)に、梅として初めて登録された。
テニスコート約13面分の梅畑
スタッフが富山県の氷見市にある『特産氷見稲積梅加工場』を訪ねると、長澤さんが出迎えてくれた。「神様というほどのものではございませんが」と笑いながらも、軽やかな足取りと明るい声で案内してくれる姿はまさに“現役の職人”。「心はヤングソルジャーですよ」と語る長澤さんは、まず収穫中の梅畑へスタッフを案内。車で山道を進むと、視界いっぱいに広がる梅の木々が現れた。
畑に到着すると、長澤さんは「全部これ梅畑」と手を広げる。テニスコート約13面分に相当し、ここだけで約260本の梅の木があるという。収穫は毎年、6月下旬〜7月上旬頃まででこの期間に1年分をすべて手作業で収穫するのだという。その後は塩漬け、天日干し、熟成を経て、ようやく9月下旬に梅干しが完成する。
スタッフがその場で梅をかじると、「酸っぱいけどみずみずしくておいしい」と驚きの声。長澤さんは満面の笑みで「真っ黄色やろ?」と返した。
寒冷地で育つ氷見稲積梅の栄養価は他の品種の約2倍!
氷見稲積梅がほかの梅とどう違うのかを尋ねると、長澤さんは「比較したのあるから」と言いながら、今回の取材のために自作した説明パネルを広げて見せてくれた。パネルには氷見稲積梅と和歌山県の南高梅の断面写真が比べられており、氷見稲積梅の種は驚くほど小さい。
富山の寒冷地で育つ氷見稲積梅は、実が自ら種を守ろうとするため果肉が厚くなり、その結果として種が小さく育つという特徴を持つ。厚い果肉にはクエン酸やミネラルなどの栄養素が豊富に含まれ、他の品種の約2倍にもなる。長澤さんは樹齢による変化も丁寧に説明し、「7年目になると実がこうやってなり始める」と成熟した木の姿を示しながら、氷見稲積梅がどのように育ち、どのように味わいを増していくのかを語ってくれた。
収穫はすべて手作業!
梅畑での収穫はすべて手作業で行われ、長澤さんは実を1つ1つ確認。選び抜かれた梅は加工場へ運ばれ、皮についた汚れや雑菌を丁寧に洗い流す。洗い終えた梅は、加工場の中で穴の大きさが異なるローラーへと流され、コロコロと転がりながらサイズごとに仕分けされていく。選別された梅の中でも、最も大きい“4Lサイズ”はゴルフボールほどの大きさになるという。
塩抜きを行わない前代未聞の製法!
次の工程である塩漬け。一般的な梅干しはカビを防ぐために大量の塩を使い、塩分濃度約20%で漬け込んだ後に水洗いして塩抜きを行うが、この工程で梅に含まれるクエン酸やミネラルなどの栄養が流れ落ちてしまう。一方、氷見稲積梅は梅100gに対して塩9%という低塩分で漬け込み、仕上がりの塩分濃度は約11.7%。塩抜きを一切行わないため、梅のうま味と栄養がそのまま残る、梅干し業界では珍しい製法“前代未聞の製法”だ。
カビや酵母が入るリスクもある製法だが、そのリスクをはるかにゼロに近づけているという。その理由は、地面に落ちる前の“木熟梅”だけを使うこだわりにある。落下梅は土の雑菌がつきやすく、柔らかくなりすぎてカビの原因になるため、氷見稲積梅では木の上で完熟した実だけを収穫する。
塩をなじませるために重しをのせ、そこへ選び抜いた赤シソを加えることで鮮やかな色が生まれる。こうして梅、塩、シソを合わせた状態で1か月寝かせると、次はいよいよ真夏の太陽で干す“天日干し”の工程へと進んでいく。
真夏の太陽の下で天日干し
7月下旬、再び訪れた富山の工場では、約1か月漬け込まれた梅がタンクからそっと引き上げられ、シソの色がしっかり染み込んだ美しい赤みを帯びていた。スタッフが「すごい、色がだいぶ染まりましたね」と声をかけると、長澤さんは「香りがいい」とうれしそうに返し、「太陽に干すともっと真っ赤になるんだよ」と続けた。
梅は、昼間は40〜50度にもなるという干し場へ運ばれる。この強い日差しこそが梅の味を決める大切な要素で、梅に含まれるリンゴ酸がゆっくり分解され、クエン酸のすっきりした酸味だけが残っていくのだという。2日間干して裏返し、さらに半日干し続けると、梅は水分が抜けてシワが寄り、まさに“梅干しらしい”姿に変わる。「このシワができないと梅干しと言わんがや」と長澤さんが笑うと、スタッフも思わず見入ってしまう。
干し上がった梅には、漬け込みのときに生まれた赤い梅酢を丁寧にかけてうま味を戻していく。梅酢が加わることで、干して凝縮された梅に再び深い味わいが宿り、さらにもう1日太陽に当てることで、氷見稲積梅ならではの豊かなうま味が仕上がっていく。
梅干し作りはいよいよ最終工程の“熟成”へ。干し終わった梅を回収するのは朝6時。まだ空気がひんやりした時間帯で、梅の表面には朝露がうっすらと浮かんでいる。太陽でカラカラに干した状態だと梅が桶(おけ)に張り付いてしまうが、朝露のおかげでそっと外れる――自然の力を味方につけた、昔ながらの知恵だ。
こうして干し上がった梅は、再び梅酢の入ったタンクへ戻される。ここからゆっくりと梅酢の中で寝かせることで、その角が丸くなり、味わいがぐっとまろやかになっていく。そして熟成すること2か月。氷見稲積梅の梅干しが完成する。
63歳からの梅づくり
長澤さんは1997年まで自動車メーカー・Honda(本田技研)で40年間働き、営業から子会社の経営まで幅広く経験してきたという。そんな長澤さんが梅干し作りを始めたきっかけは、孝太郎の父である小泉純一郎元首相の“食育”への強い思いだった。2000年頃、朝食を抜く子どもが増え10人に1人が肥満傾向になる(※出典:文部科学省「学校保険統計」)など食生活の乱れが社会問題となる中、小泉元首相は食育の重要性を訴え続けていたのだ。
長澤さんはその姿勢に心を動かされ、「本当にいい食品を通して食育の一環に貢献したい」と考え、梅干しを作る決意を固める。そして63歳にして梅畑を一から開拓。3〜4年かけて約3400本の梅を植え、企業年金のほとんどを山に投じたというから、その覚悟は並大抵ではない。開拓した土地は4年で8400ヘクタール、東京ディズニーランド約164個分にもなる広さに成長し、2011年には『氷見稲積梅株式会社』を設立。年間約4000万円を売り上げるブランドへと育て上げた。
今ではその広大な土地の多くを地元の人々に分け与え、梅干し作りを広める活動も続けている。自分の情熱だけでなく、地域の未来のためにも梅を託す長澤さんの姿は、まさに“梅干しの神様”と呼ばれるにふさわしいものだった。
スタジオのヒロミと孝太郎が氷見稲積梅を実食
スタジオでは、いよいよ“神の梅干し”こと氷見稲積梅の実食へ。ヒロミが「まずは梅干しだけ先に食べてみよう」と箸を伸ばすと、ひと口目で「上品な梅干し」とうなる。
孝太郎も「いい酸っぱさですね」と続き、果肉の厚さからくる豊かな果実味に驚いた様子を見せる。塩分が控えめなため、しょっぱさが前に出すぎず、酸味とのバランスが絶妙で、白いご飯との相性も抜群。「しょっぱすぎず酸っぱすぎず、ご飯との組み合わせが抜群にいいですね」と孝太郎が言うと、ヒロミは「これ、おにぎりにして旅に出たい」とコメントし、スタジオは笑いに包まれた。
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文:entax編集部