東京藝大卒の天才が“特殊メイクの神”になるまで…極貧の倉庫暮らしから映画『国宝』で日本アカデミー賞受賞までの壮絶裏側
ヒロミと小泉孝太郎の2人がMCを務める『オー!マイゴッド!私だけの神様、教えます』が9月26日に放送。映画『国宝』も担当した“特殊メイクの神”に密着した。
日本アカデミー賞を総なめにした映画『国宝』の特殊メイクを担当した神とは?
道行く人に“自分だけの神様”を聞き、実際に会いに行くこの番組。東京・下北沢で声をかけた美容学生の女性の神は、特殊メイクを手掛けるAmazing JIROさんだという。2025年に公開され社会現象となった大ヒット映画『国宝』で特殊メイクアーティストとして参加。チームとして日本アカデミー賞クリエイティブ貢献賞を受賞した実力者だ。
番組スタッフが向かったのは、東京都亀戸にある神・JIROさんのアトリエ。51歳のJIROさんは「神様ではないけれど」「Amazingと名乗った以上、頑張んなきゃいけない」と語るストイックな職人肌。『国宝』では人生の時間軸を表現するため、キャストが年齢を重ねていく姿を“老けメイク”でリアルに作り上げたという。
その技術は映画だけにとどまらない。配信作品では戸田恵梨香が演じる細木数子の特殊メイクを担当し、戸田本人も意欲的に特殊メイクを受け入れてくれ、喜んだという。またCMでは志尊淳を“縁側のお爺(じい)さん”に変身させるなど、俳優の個性を残しつつ別人へと導く繊細なメイクが高く評価されている。
特殊メイクの神が“筆1本で老けさせる技”を実演!
番組スタッフがJIROさんに「技術を見せてほしい」とお願いすると、JIROさんは「筆一本で老けさせる技なら」と快諾。モデルに選ばれたのは、番組配属わずか2週間の新人AD。JIROさんは彼女の表情を見ただけで、そのシワの入り方などから未来の姿が想像できると語り、老けメイクを始めた。
使うのは数種類のドーランと筆のみ。まず濃い茶色で輪郭に影を入れ、頬のたるみや骨の浮き上がりを“陰影だけ”で表現。続いて肌の色に近い明るいドーランで眉骨や前頭骨の“高い位置”を描き、さらに肌より明るいハイライトを、低い位置に下げることで皮膚が垂れたように見せる。影をぼかしながらなじませると、顔の立体が一気に“老けた質感”へ変化していく。
JIROさんが大切にしているのは、観察。若い頃から巣鴨でお年寄りの顔を観察し、たくさんのおじいちゃんおばあちゃんに顔を撮影させてもらって資料化。シワの成り立ちを研究したという。シワの成り立ちについて理解できた今は、街で見かけた人のシワを“答え合わせ”するのだという。そうやってリアリティを追求してきたのだ。
最後にシミを描き込み、約1時間でメイクが完成。24歳のADは、過酷な人生を歩んだ80代のおばあちゃんに大変身。鏡を見た本人は「やばい…気持ち悪い」と絶句し、JIROさんは「褒め言葉ですね」と笑った。筆1本で年齢を50年進める圧巻の技術に、スタジオも驚きの連続だった。
特殊メイクの神は“造形の神”でもあった
神・JIROさんのすごさは特殊メイクだけにとどまらない。アトリエには、これまで手がけたマスクやコスチューム、オブジェなどが並ぶ“展示ルーム”があり、スタッフも思わず「すごい!」と声を上げるほどの迫力だ。
中でも圧巻なのが、JIROさんが開発した超リアルマスク。人間の顔を精密に再現したマスクで、被るだけで“別人”になれる完成度。スタントマンが安全に代役を務めたり、同じ人物が複数人いるような演出を可能にしたりと、映像制作の幅を広げる発明だ。街を歩いても気づかれないほどリアルで、企画として実際に“マスク姿で街を歩く検証”も行われたという。
マスクの制作には最新技術も活用。かつては印象材で顔型を取っていたが、現在はデジタルスキャンで形状を読み取り型を作り、そこにシリコンや強化プラスチックを流し込んで仕上げる。JIROさんにとってリアルは「1つの僕の武器」と語り、特殊メイクと造形の両面で“本物の存在感”を追求している。
ヒロミと孝太郎がスタジオでリアルマスクを神体験!
スタジオには、JIROさんが制作した“超リアルマスク”が登場。孝太郎が「今日お借りしてきました」と取り出すと、ヒロミは「えっ!?これは誰か元がいるわけ?」と驚き。マスクのモデルは、JIROさんの知り合いの社長だと聞き、さらに興味津々に。
ヒロミがマスクをかぶると、孝太郎は思わず「うわっ!怖い!すげぇ怖い!」と後ずさり。ヒロミの顔は完全に“別人”になっており、孝太郎は「怖い!」「ヒロミさんのヒの字もないんだもん」と鳥肌を立てるほどのリアルさ。
続いて孝太郎もマスクを装着。孝太郎が「ヒロミ君!俺だよ!」とふざけると、ヒロミは「いるよ!こういうご陽気な人!」と爆笑。観客席からは「いや〜!」と悲鳴が上がり、孝太郎は「女性からこういう悲鳴初めてかもしれない」と苦笑いだった。
特殊メイクの神・Amazing JIROの原点
JIROさんの原点は、幼少期に過ごしたロサンゼルスで出会った実写版のアメコミヒーローだった。ヒーローを見ては夢中で絵に描き、日本に帰国後も“大人びた絵”を描く少年として周囲を驚かせた。小学6年生で描いた荒波の船の絵は校長室に飾られるほどの腕前だったという。
その後、そのたぐいまれなる才能から、日本の芸術大学の最高峰・東京藝術大学に進学。金属加工を中心とした作品作りに勤しむ中で、「リアルな人間を作る技術」に興味を持つ。映画『リング』『らせん』の特殊メイクに衝撃を受け、「人間を作れる技術を身に付けたら、何でも作れる人間になれる」と思ったことが転機となった。
東京藝大卒業後は特殊メイクの専門学校で技術を一から学び直し、26歳で会社を設立。しかし、最初の仕事はゼロ。家も借りられず、冷暖房もない100㎡の倉庫で4年間生活したという。
そんな苦労の末、転機となったのが『TVチャンピオン』(テレビ東京)への出演。「特殊メイク王選手権」で2年連続優勝を果たした。題材にブルドッグを選び、コワモテのキャラクターを作り上げた作品は、JIROさん自身も「ギャップが面白かった」と語る記憶に残る一作となった。その後、仕事の依頼が急増。現在は自身のアトリエで作品を作り続ける一方、特殊メイクの専門学校を設立し、後進の育成にも力を注いでいる。
神が作るゾンビメイクとは?
JIROさんは特殊メイクの専門学校『JUR』を設立。この日の授業では、JIROさんが学生たちに“ゾンビメイク”の基礎をレクチャー。JIROさんは「骨の構造を理解することがリアルを作る鍵」と語り、学生たちは真剣な表情で技術を盗もうとしていた。
JIROさんが学生をモデルにゾンビメイクのお手本を披露。モデルとなった学生の顔に、まずロウを貼り付け、その周囲を柔らかいシリコンで囲んで“傷の土台”を作る。切れ目を入れた後、JIROさんが取り出したのは柔らかい金属線・ハンダ。これを折り曲げて縫い目のように見せることで、傷口が“縫われた跡”のようなリアルな質感に変わっていく。
さらにシリコンの切れ目に血の色を重ね、影をぼかしながらなじませると、顔の立体が一気に“ゾンビの質感”へ。JIROさんは「血が苦手なんですよ」と笑いながらも、約1時間半で圧巻の仕上がりを完成させた。学生が自分の顔を鏡で見ると「え?待って!ほんと!?」「想像の何億倍ヤバイんですけど」と大興奮。JIROさんが設定したテーマは“人造人間”。孝太郎が大失恋し、ヒロミがDIYで新しい彼女を作った──というユーモアあふれるストーリー付きで、スタジオも大盛り上がりとなった。
神考案のリアル変身メガネをヒロミと孝太郎が神体験!
スタジオには、JIROさんが考案した『リアル変身メガネ』が登場。孝太郎が「どーも!」とメガネをかけて顔をあげると、ヒロミは「ご陽気!いいね〜!」と爆笑。目元だけでまったく別人に見えるリアルさに、2人とも驚きを隠せない。
続いてヒロミが挑戦。「俺にかけさせて」と意気込み、孝太郎は「僕、見ないですね。どういう人かわかってない」と背を向けて待機。そしてヒロミがメガネ姿で振り向いた瞬間「お前なんだよ!お前なんだよ!おい!」と孝太郎に迫り、「役作りはできてますね」と孝太郎も大笑い。ヒロミも「すごいよね、どうなってるかわかんないけど」と、自分の顔が“完全に別人”になったことに驚きながら笑っていた。
目元だけで人格まで変わったように見える“リアル変身メガネ”。スタジオは終始笑いと驚きに包まれ、JIROさんの発想力と造形センスのすごさが改めて際立つ体験となった。
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文:entax編集部