「忘れない」──悠(山田涼介)と紫陽(堀田真由)が迎えた切なすぎる結末…静かなすれ違いが残した『一次元の挿し木』最終話の余韻
9月6日に読売テレビ・日本テレビ系日曜ドラマ『一次元の挿し木』の最終話が放送された。
(※以下ネタバレ含みます)
2025年『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリを受賞した話題作が、ついにドラマ化──。ヒマラヤ山中で発掘された“200年前の人骨”が、失踪した義理の妹のDNAと完全一致するという衝撃の謎を皮切りに、関係者の不審死、盗まれた人骨、消えた記憶が連鎖し、妹の“正体”が浮かび上がっていく。二転三転する真実の果てに待つのは、想像を絶する結末。時を超えた謎に挑む、圧巻のヒューマンミステリー。
黛が牛尾を追い詰めるが…
山城美術館にいた真理(白石聖)の前に、ポリタンクを持った牛尾(吉原光夫)が現れる。紫陽(堀田真由)を探す牛尾に、真理は震えながらも「ここには私しかいない!」と叫び、それを聞いた牛尾がポリタンクの蓋を開けながら迫ってくる。その瞬間、銃声が響いた。発砲したのは、駆けつけていた刑事・黛(土居志央梨)だった。ポリタンクの液体を浴びながらも、牛尾を追い詰めていく黛。しかし牛尾の反撃にあう。
そこへ悠(山田涼介)が到着し、紫陽を必死に探す。真理の傍らのソファには、衰弱しきって横たわる紫陽の姿が。声を出すこともできない紫陽に代わり、真理が静かに語り始める。石見崎(正名僕蔵)と車いす姿で会っていたのは紫陽だったこと。悠の学会を、石見崎に内緒で見に行っていたこと。石見崎の研究が紫陽の体に関係しているかもしれないと聞いていたこと。紫陽がどれほど悠を思い、どれほど孤独な状態で生きてきたのか──真理は、悠と離れてからの紫陽の姿を伝えるのだった。
SNSには、真理が紫陽の気持ちを語ることに「紫陽がずっと悠を見守ってたの泣ける」「真理の告白が優しすぎて胸が苦しい」という声があがり、やっと再開した悠と紫陽に「紫陽の衰弱がリアルで見ていられなかった」「本当は抱き合って喜びたいはずなのに…」「こんな状態になるまで1人で耐えていたんだ…」など、衰弱状態の紫陽に同情の声が寄せられた。
“怪物”の最後
牛尾は再び館内へ戻って来る。悠が背後から襲いかかり紫陽を連れ出そうとするが、牛尾は立ち上がり悠と向き合う。悠が「なぜこんなことをする?」と問いかけると、牛尾は「すべてはあらかじめ決まっている。“生まれ”が運命を定める」と語り、さらに「私は人間ではない!そこにいる女も人間ではない!」と叫ぶ。そんな牛尾に、悠は迷いなく言い返す。「人間だ!」と。
悠に迫る牛尾に、紫陽は母・楓(小橋めぐみ)から託された“聖母の神器”とされるナイフを取り出す。それを拾った悠が牛尾を刺すが、逆上した牛尾はなおもポリタンクを振り上げて襲いかかる。まさに絶体絶命──そこへ京一(佐々木蔵之介)が駆けつけ、ライフルを発砲。薬品の入ったポリタンクに引火し、牛尾の体は炎に包まれる。燃え上がる牛尾の姿は、背後で流れていた映画『フランケンシュタイン』の怪物の最期を思わせるものだった。
紫陽の運命は…
美術館から紫陽を連れて脱出した悠と真理。しかしその前に、『樹木の会』の春日(松下由樹)と信者たちが立ちはだかる。紫陽を連れて行こうとする春日たちを悠が必死に止めようとするが、紫陽は静かに告げる。「私が呼んだの」。紫陽は、自ら『樹木の会』を選んだのだ。
『樹木の会』の施設で治療を受ける紫陽を見守る悠たち。そこへやって来た仙波佳代子(鈴木保奈美)が、「あのクローンもあなたたちも全員殺してやる」と、黛から奪った銃を向ける。京一は仙波の前にひざまずき、深く頭を下げる。そして悠も「紫陽を救ってください」と仙波に頭を下げる。「紫陽はあなたが生み出した。救えるのはあなただけなんです!」と。
病室から立ち上がって仙波のもとにやってきた紫陽が倒れ込み、思わず抱き留める仙波。紫陽を抱きしめているうちに、仙波は思わず「私の娘…」と口にするのだった。
聖母となる紫陽
紫陽の治療を開始した仙波。紫陽のDNNは損傷していて、医療の域を超えているが、自分なら治せると確信する仙波は「もうあの子を手放したりしない」と告げる。
春日は、紫陽の今後は『樹木の会』が保護すると悠たちに伝える。そもそも『樹木の会』の“聖母(マァタジー)”として作られた紫陽。『樹木の会』で別人として生きることは、紫陽の強い意志でもあることを告げられる。悠は紫陽の健康と意志を尊重すると、その言葉に抗うことはできなかった。
『樹木の会』の聖母として即位する紫陽。その即位式に悠も立ち会っていた。紫陽は「生きているものって、生まれてきただけで意味があると思う。それがどんな過程でも、どんな姿でも。私はその人たちのことを思って今も生きている」と語り、悠に「ありがとう」と残し、聖母としての新たな道へと歩き出していくのだった。
紫陽が聖母として生きていくことを決めたことに、視聴者からは「2人はこれからずっと一緒にいると思ったのに…」「離れ離れの時間を一緒にいて埋めてほしかった」という声があがる一方で、「自分の場所で強く生きていくことを決めたんだ」「遠くにいても同じように大切に思っているはず」など、紫陽の決断を尊重する声も広がっていた。
それぞれの人生
京一は、社長を解任されたあと、自ら警察に出頭。会社の金を横領し隠蔽したと告白。紫陽の存在は『樹木の会』が警察と結託して隠蔽し、公になることはなかった。さらに仙波の孫の圭太は、その後無事発見される。証言によると、仙波の義理の娘・友江(藤井美菜)が最後まで身を挺(てい)してかばったことで、圭太は無傷だった。牛尾は遺伝子病の圭太に自分を重ねたのか、手にかけることはしなかったという。
ある日、悠は街中で『樹木の会』の信者たちと歩く紫陽の姿を見つける。すれ違っても、2人は目を合わせない。それでも──「忘れない」と、互いにそっとつぶやく。言葉にならない思いだけが、静かに交差していくのだった。
SNSでは、「このすれ違いが美しすぎる」「言葉にしない愛が伝わった」「静かなラストが心に残る」と、静かで切ない別れの余韻に心を揺さぶられた視聴者の声が広がった。
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©松下龍之介/宝島社/ytv
文:entax編集部