シンガーソングライターAnly 単独インタビュー 戦争の話を聞いて感じた“生きることの大切さ” 『Alive』誕生秘話
英語詞や日本語詞、様々なジャンルの音を楽曲の随所に感じさせ、パワーのある圧倒的な歌唱力が魅力のシンガーソングライター・Anly。TikTokでは関連動画が12億回再生とバズり、人気アニメの主題歌も手がけるなど、いま注目の彼女が10月12日に、4thアルバム『QUARTER』をリリースした。ミクスチャーロックから壮大なバラードまで彼女の多様な音楽性を表現した1枚となっており、このアルバムに込めた思いをentax取材班が聞いた。
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■沖縄戦を経験したおばあちゃんの言葉「諦めたら終わりよ」がグサッと来た
——1曲目の『Alive』はAnlyさんの故郷である沖縄が舞台となっていますが、何がきっかけで生まれた楽曲ですか?
私は沖縄に戻った時、実家じゃなくて、事務所の社長の自宅兼スタジオに滞在して楽曲を作ることがあるんです。そこに、その社長のお母様が一緒に住んでいて、私が曲を書こうって思った当時92歳だった。だから歌詞に「92歳のおばあちゃん」っていう言葉が出てくるんですけど、そのおばあちゃんと朝昼晩一緒にご飯を食べ、話していく中で、沖縄戦の話をしてくれたことがあった。
おばあちゃんは、ひめゆり学徒隊の生き残りで、負傷した兵隊の手当てができるように看護訓練を受けた女子学生たちが集められた、その中の一人だったんですね。戦争がひどくなり、途中から叔母と一緒に逃げていて、最後の最後におばあちゃんが敵に囲まれて、銃を構えてるのが見える状態で追い込まれて、どうしようってなったときに、その当時の教育で「捕まるぐらいだったら自決しなさい」って教えられてたらしくて。
どこで拾ったかは覚えてないけど、手りゅう弾を持ってたらしいんです。いざとなったらこれを引いて自決しようって思ってたらしいんですけど、叔母が「それを持ってたら絶対撃たれるから、地面に置いて私と一緒に投降しよう」って言ってくれたらしく、地面に置いて白いハンカチを振って投降して生き残ったっていう話を聞きました。
そのときに(手りゅう弾の)栓を抜いていたら、おばあちゃんは生きてないし、社長も生まれてないし、私がこうやって話を聞くこともない。音楽を届けたり、作ったりする環境もなかったかもしれないと思ったら、おばあちゃんのその行動、足跡一つ一つが全部自分にもつながってたんだと思い、すごく考えさせられた。
コロナ禍になり、ネガティブな話をしていた時に、おばあちゃんがぼそっと「諦めたら終わりよ」と言ったことがあって、私にはグサッと来て、この言葉は覚えておかなくちゃって思って、すぐメモに書いたんですね。「諦めたら終わりよ」という言葉の裏にある、おばあちゃんの人生が全部バーッと入ってきた。「そうだよな、生きてるからもっとできることあるよな。おばあちゃんも色々あって、こうやって一緒にいてくれるしな」と思って、この言葉をもとに曲作りしたのがきっかけで『Alive』はできました。

——『Welcome to my island』は1曲目の『Alive』とつながっているように感じたのですが、この2曲の関係性について教えてください。
どっちも沖縄にいるときにできた曲だったので、ちょっと血がつながった曲みたいに思ってます。『Welcome to my island』も『Alive』も、沖縄戦の話を小さい頃から聞いていて、最近戦争体験を聞く機会があって、いま世の中で起きてることとリアルタイムに重なる部分があったので、アルバム全体としては主題歌と言っても過言ではないと思ってるのが『Alive』。
そこからの流れで『Welcome to my island』を作ったんですけど、この“island”っていうのは沖縄だけじゃなくて、地球をふかんして見たら全部島じゃんって思ったことがあったんですね。それぞれの島の人達が自分の国とか島に来て、一緒に仲良くしようよっていう、そういうことを願わないと前に進まないんじゃないかな。そういうことを思う人がいなくなったらしょうがないよねっていう意味で『Welcome to my island』がつながってるという感じです。

■自分を信じてカッコいいと思うことが、カッコいい
——『KAKKOII』はタイトル通り、クールでカッコいい曲調で、歌詞に言葉遊びも散りばめられていますが、この曲にはどんな思いが込められていますか?
この曲は、自分自身の中で自分をカッコいいって100パーセント思えないときに作った曲です。だからああいう歌詞になった。自信がない時に作ってて、自分自身が生み出してる創作物とか着てるものとか、考えてることに自信がなかった。でも、もしかしてこれって時代の先を行ってるから今合ってないだけみたいな、すごい謎のポジティブが心を満たしてくれたことがあった(笑)。
でも意外とそういうことって多いなって思うんですよね。自分さえ信じて、これはカッコイイって思うって貫いてる人が、今はかっこいい時代になってる。今はカッコいいって思われてないかもしれないけど、自分が今カッコイイって思ってたら大丈夫だと思うし、時代がついてきてないだけだって思うだけでも強くいれるっていう部分で書いた曲がそういうサビになってる。私のことを今知ってくれてる人ってめっちゃカッコいいって思うから、この楽曲を聴いてるだけで、もうあなたカッコイイですよって言える楽曲を作れたらいいなと思って作りました。
言葉遊びに関しては本当にふわっと浮かんできて、自分自身で見てきたカッコいいと思える光景や人、歌詞が全部入ってて、歌うとすごい自信が湧きます。(歌詞にすき焼きを入れたのは)私すき焼き食べたことなかったんですよね。家族でしか鍋したことなかったんですけど、東京に出てきてスタッフとかと鍋を囲んで、日常のあれやこれを話してる。鍋だけじゃなくても、ただコーヒー片手に語ってても、それだけでもカッコいい瞬間があるんじゃないかと思ったんですね。
自分自身が言ってる意見だとか、それは違うと思うなって心の中で思ってる瞬間もカッコいいとか、そういうことを思ったんですよね。すき焼きとか初めて食べたんで、東京来て。かっこよくないですか、すき焼きって(笑)。
【Anly プロフィール】
1997年1月、沖縄・伊江島生まれ。2015年メジャーデビュー。ループ・ペダルを駆使したライブや、アコースティック・ギター弾き語りなど、イベントや会場にあわせてスタイルを変えるパフォーマンスが魅力。日本国内にとどまらず、香港や台湾、ドイツなど海外でもライブを行っている。

