欲望と転落の果てに——マクミラン『マノン』、待望の再演開幕 新国立劇場バレエ団
本日3月19日、ドラマティック・バレエの最高峰と称されるマクミラン振付『マノン』が開幕した。2020年の上演はコロナ禍の影響で一部中止を余儀なくされただけに、本再演はまさに待望の機会といえる。

本作は、愛し合いながらも破滅へと堕ちていく若い恋人たちの姿を通し、人間の欲望とその代償を容赦なく描き出す。貧困、格差、そして女性の身体をめぐる搾取といった問題は、18世紀フランスを舞台にしながらも、現代社会と鋭く接続する普遍性を帯びている。単なる悲恋ではなく、社会構造の歪みの中で翻弄される個人の運命を問う作品である点に、本作の核心がある。

演出面では、英国ロイヤル・バレエ&オペラの制作協力のもと、ニコラス・ジョージアディスによる美術と衣裳が舞台を支える。絢爛でありながら退廃の気配を漂わせるビジュアルは、物語の官能性と残酷さを増幅させ、観客を一気にその世界へと引き込む。

マクミラン作品の特徴であるドラマチックな展開も見逃せない。とりわけマノンとデ・グリューのパ・ド・ドゥは、愛と依存、歓喜と絶望が交錯する対話となり、観る者の感情を揺さぶる。

今回初めてマノン役を演じる柴山紗帆はこう語った。
「“役を生きる”ところまでいけたらと思っています。マノンという人物が、観る人にとって“悪”に見えるのか、それともそうではないのか。その解釈は、観ていただいた方それぞれの気持ちに委ねられているのではないかと感じています。ハッピーエンドの物語ではありませんが、登場人物たちの感情の中には、きっと誰もがどこかで知っている気持ちがあると思います。18世紀のフランスが舞台となっている作品なので、現代を生きる私たちには理解できないと思う部分も含めて、その素直な感情を持ち帰っていただけたらうれしいです」

『マノン』は、美しさと残酷さが紙一重であることを突きつける作品である。同時に、それでもなお人は愛を選び、欲望に抗えないという、人間の本質を描き出す。その普遍的テーマがどのように立ち上がるのだろうか。
写真:新国立劇場バレエ団『マノン』 撮影:鹿摩隆司
取材・文:和田弘江
≪公演日程≫
2026年3月19日(木) 18:30
2026年3月20日(金・祝) 13:00
2026年3月20日(金・祝) 18:00
2026年3月21日(土) 14:00
2026年3月22日(日) 13:00
2026年3月22日(日) 18:00

