【独占インタビュー】「今だからできるトートに」珠城りょうが語る『エリザベート TAKARAZUKA30thスペシャル・ガラ・コンサート』
宝塚歌劇団で幾度も上演されてきた名作『エリザベート』が来年、日本初演から30周年を迎え、2026年2月から3月にかけて『エリザベート TAKARAZUKA30thスペシャル・ガラ・コンサート』が開催される。総勢58名の豪華キャストがそろい踏みするこの記念公演に、元月組トップスター・珠城りょうが黄泉の帝王・トート役で大阪・愛知公演に出演する。卒業後の今どのような思いで再び演じるのか、entaxが独占インタビュー。
――ガラ・コンサートご出演は今回初めてとのことですが、オファーを聞かれた時の気持ちはいかがでしたか。
珠城:すごくうれしかったです(即答)
『エリザベート』は宝塚歌劇を代表する大ヒットミュージカルとして、1996年の初演以来、計10バージョンで1000回を超えて上演されてきた。珠城自身も2018年の月組公演でトートを演じている。
『エリザベート』という作品の魅力については。
珠城:とにかく幅広い世代の方に愛されている作品だと思うんですけど、見る人自身の年代が変わることによって共感できる役が変わったり、感情移入する部分が変わったりするところがあるのかなと感じます。そしてやっぱり楽曲のメロディがとても美しい。エリザベートという世界観を楽曲だけでもすごく表現されているところがたくさんあるので、楽曲の力も『エリザベート』の魅力なのかなと思いますね。
――年代によって感情移入するところが変わるというお話、よく分かります。珠城さん自身はどういう風に変化してこられましたか。
珠城:私は演じた役がトートでしたから、そこから大幅に変化というのはちょっとまだ分からないんです。これまでずっとトートの視点で見ていた部分が多かったのが、もしかしたら今の自分がこの作品を客観的に見たら感情移入する役が変わるかもしれないなっていうのは、今回ガラ・コンサートに参加するにあたってとても楽しみなところの1つでもあります。
――トートというキャラクターの見方に変化はありましたか。
珠城:2018年の、月組公演の時に作り上げたトートというのはあくまでベースに考えていきたいと思っています。なのでトート像に関する変化が今すごくあるというよりも、あのトートをベースに改めて向き合うのかなと。
私にとって宝塚の男役ってとても特別なもので、あの世界にいるからこそ成立するものだという思いが自分の中ですごくあるんですね。それだけ自分が懸けてやってきたので、「宝塚の男役をなぞる」というよりは、今の自分だからこそできるアプローチの仕方というのを、お衣裳(いしょう)やセットなどいろんなものの力を借りて表現していきたいと思っていて。トートは「死」という概念なので、そこはあんまり凝り固まらずに柔軟に皆さんの空気を感じながら作っていけたらいいなと思っています。フラットな気持ちで楽曲に向き合うということを心がけていきたいです。
2021年に宝塚を退団してから4年。自分の変化をどう捉えているのだろうか。
珠城:この4年の間、ずっとボイストレーニングには通い続けていました。ミュージカルなど歌のお仕事がないときでも、ずっと絶えず通い続けていたので、改めてこのエリザベートの楽曲に歌稽古で触れたときに自分の中でかなり発声も変わっているなと感じました。それによって表現の幅が広がるというか、自分がお芝居の感情を歌に乗せる余白が以前より増えているなという印象を得ることができたので、4年間トレーニングを続けてきてよかったなって思っているところです。
宝塚を卒業して自分自身の心情の変化というのもありますし、ゆとりという意味でもそうですし。いろんな現場で得た経験というものが必ず生きてくると思うので、その変化も感じながら新鮮な気持ちで向き合っていけたらいいなと思っています。
卒業後、「いろんな現場で」様々な作品に挑戦してきた珠城。特に印象深かったのが『ミュージカル 20世紀号に乗って』だという。
珠城:初めてのヒロイン役で、楽曲もとにかく難しく、今まで歌ったことがないような音域に挑戦した作品だったので、すごくプレッシャーがありました。稽古中も1人だけ残って歌稽古を入れていただいたりして、ずっと没頭している日々だったんです。ですが実際に幕が開いたときにお客様からすごく温かいメッセージをたくさん寄せていただいて。なんだか本当に、挑戦してよかった、頑張ってよかったという実感を得られたのが、とても幸せな経験だったんですね。何事もやってみないと分からないんだなということを身をもって経験することができたので、なんでも恐れずに、挑戦するのは怖いかもって思うことほどやってみた方がいいんじゃないかなって。その方がより高い壁を超えることができるんじゃないかと思えるきっかけになりました。自分も挑戦してよかったと思いますし、受け入れてくださった観客の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

――映像作品にも出演される中で、舞台・コンサートへの向き合い方は変わりましたか。
珠城: 映像はとにかくシンプルにというか引き算の作業になってくるので、舞台とアプローチの仕方はまったく違ってきます。例えば会社員の役となったら「生活すること」をきちんと表現しなくてはいけないじゃないですか。だからこそ逆に日常で自分がきちんと「生活する」ということがそのまま仕事に反映されるので、よりプライベートの時間を大切に過ごすことがそのまま映像の現場には生きるんだなと感じます。今回の作品に生活感はまったくないですけど…トートがご飯炊いたりお茶を淹(い)れていたらおかしいですもんね(笑)舞台の良さというのは、「これはTHEエンターテインメントですよ」って提供できるところ。なんでもできる、なんでもありな冒険ができるのは面白いですね。普通だったら「死」という存在を演じるのはありえないことでも、舞台だからこそできる表現があると思っているので、新鮮に楽しみたいです。
自分としては表現の幅を狭めていきたくないんです。映像も舞台も、作品についても大小関わらず、この役を珠城さんにやってほしいと思ってもらえるような役者でありたいと思っています。一番はやっぱり人と人なので、この人とまた一緒に仕事がしたいと思ってもらえる人間でいることが一番大切だなと。自分の心を豊かにしつつ、いいエネルギーを循環させながら過ごしていきたいですね。
表現者として幅を広げ続ける珠城が、今回特に楽しみにしているのが豪華キャストとの共演だ。珠城が出演するアニヴァーサリー18’月組バージョンのキャストには、夢咲ねね、宇月颯、柚香光らの名前が並ぶ。
珠城:夢咲ねねさんがエリザベート役でいらっしゃいます。私はねねさんとは在団中にはご一緒していないんですが、卒業後にはご縁があって一緒に舞台に立たせていただいているんです。ガラ・コンサートだからこその組み合わせも楽しんでいただけたらうれしいなと思いますし、(ルキーニ役の)宇月さんは月組でご一緒していて、(ルドルフ役の)柚香光ちゃんは1期下で、繋(つな)がりがある皆さんと共演できるのも楽しみです。
さらに、同期との共演も実現する。
珠城:同期の和海しょうと初めて一緒に舞台に立つんです!組が違ったので一緒のお稽古場でお稽古するのは初舞台以来で、個人的にすごく楽しみです。タイミングがないと違う組の同期とは一緒に舞台に立てなかったので…こういう機会はうれしいです。
――珠城さん自身がお客さんとして見たい組み合わせはありますか。
珠城:私はやっぱり月組で育ったので、瀬奈じゅんさんがトート、霧矢大夢さんがフランツ、この回は見たいですね。私がいた時、大空ゆうひさんは月組にいらっしゃらなかったんですけど、この座組に大空さんが加わってというのは見ずにはいられないですよね!
――公演を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージを。
珠城:今回このエリザベート スペシャル・ガラ・コンサートに出演できることを私もとても楽しみにしています。どの回もガラ・コンサートならではの組み合わせ、ガラ・コンサートでしか観られない組み合わせとなっていますので、たくさんの方にご覧いただけたらと思いますし、私もまた新鮮な気持ちでトートという役、『エリザベート』の楽曲に向き合っていきたいなと思っています。ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです!

宝塚歌劇団による日本初演から30年。色褪(あ)せることなく多くの観客を魅了してきた『エリザベート』が、またひとつの歴史を刻む。『エリザベート TAKARAZUKA30thスペシャル・ガラ・コンサート』は、2026年2月6日から2月20日まで東京国際フォーラム ホールC、2月28日から3月15日まで梅田芸術劇場メインホール、3月23日から25日まで御園座にて上演。アニヴァーサリーバージョン、フルコスチュームバージョン、そして初演メンバーによるモニュメントバージョンの3形式で上演される。











