実写映画『秒速5センチメートル』 演じる上で難しかったこととは?松村北斗「憧れるということを一切やめて…」【釜山国際映画祭】

2025.9.24 15:15
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第30回釜山国際映画祭 公式上映前のGuest Visit(舞台挨拶)に登壇した実写映画『秒速5センチメートル』 主演・松村北斗と奥山由之監督

新海誠の劇場アニメーションが原作で2025年10月10日(金)公開の実写映画『秒速5センチメートル』。この度、本作が釜山国際映画祭のメイン会場「映画の殿堂」にて、【オープンシネマ部門】公式上映を実施。また、公式上映前のGuest Visit(舞台挨拶)に主演・松村北斗と奥山由之監督が登壇した。

『君の名は。』(2016年)、『天気の子』(2019年)、『すずめの戸締まり』(2022年)など、記録的な大ヒット作を生み出してきた新海誠の劇場アニメーション『秒速5センチメートル』(2007年)。映像美、音楽、特徴的なセリフで編まれた詩的な世界観は、センチメンタリズムが凝縮された新海ワールドの原点との呼び声も高く、公開から18年たった今もなお、日本のみならず世界中で愛されている。
主人公を松村北斗が演じ、映像監督・写真家として若くして国内外から高い評価を得ている奥山由之が監督を務める。

1991年、小学生で出会い、互いの孤独にそっと手を差し伸べるようにして少しずつ心を通わせていた貴樹(上田悠斗)と明里(白山乃愛)。
1997年、種子島でのどこか心ここにあらず過ごす貴樹(青木柚)と、貴樹に想いを寄せる花苗(森七菜)の高校生活。
そして2009年、人と深く関わらず、東京で閉じた日々を送る貴樹(松村北斗)と、あの頃の想い出とともに日常を生きる明里(高畑充希)。18年という時を、異なる速さで歩いた二人の、大切な人との巡り合わせを描いた物語。

実写映画『秒速5センチメートル』 に出演する松村北斗、高畑充希

この度、本作で主演を務めた松村北斗と奥山由之監督が、第30回釜山国際映画祭に参加。
9月22日(月)20時より、釜山最大の座席数を持つメイン会場「映画の殿堂」の野外スクリーンにてオープンシネマ部門の公式上映が行われた。

公式上映前のGuest Visit(舞台挨拶)で、奥山監督は「『秒速5センチメートル』の監督をしました、奥山由之です」と韓国語で挨拶。そして「30回目の釜山国際映画祭という節目のタイミングで、『秒速5センチメートル』を皆さんと一緒に観覧できることを嬉しく思います。今日はよろしくお願いします」と述べた。
続く松村も、「僕自身まだ映画の本編というものを一回しか見ていないので、今日皆さんと観るこの状況で二回目です。そしてこの大きなスクリーンでこんなにもたくさんの人と一緒に観るというのはきっと人生で唯一の日になると思います。今日は素晴らしい映画体験を一緒に迎えましょう」と挨拶。

--釜山での滞在や今日の上映を控えて、今のお気持ちはいかがでしょうか? 

奥山由之監督:ちょっとだけ個人的な話をさせていただくと、僕は十数年間、写真家やミュージックビデオやコマーシャルの監督をしてきました。ただ、映画がすごく好きで、いつか映画を撮りたいと思っていて、ようやくこの数年間で映画制作に携わることができました。
『秒速5センチメートル』という作品で釜山国際映画祭に来ることができて、上映後にお客さんの拍手を聞いたり、GVで熱意のあるお客さんと会話をしたり、街中でたまたま憧れの監督に出会えたり、そういった素晴らしい経験をすることができました。
そして何より、映画祭期間中、いくつかの映画を観たのですが、映画ファンのお客さんと一緒に、満席の会場で映画を観た時間が、本当に楽しかったです。一緒に感動したり、笑ったり、考えたり、そういう経験を通して、映画を初めて好きになった時の気持ちを思い出して、僕は心から映画が好きだということを実感できました。自分の映画人生にとって節目となるような経験をさせてもらえた釜山国際映画祭に心から感謝しています。映画という文化が、これからも末長く続くことを、心から祈っています。
最後に、松村北斗という素晴らしい俳優に出会えて、一緒に『秒速5センチメートル』を作ってきたスタッフやキャストに、そして、原作の新海誠さんに心から感謝したいと思います。今日は皆さんと共に映画を楽しみたいです

第30回釜山国際映画祭 公式上映前のGuest Visit(舞台挨拶)に登壇した実写映画『秒速5センチメートル』 主演・松村北斗と奥山由之監督

--原作のアニメからも演じるのが難しい役だと思っていました。常に繊細で落ち着いた演技力で高く評価されている松村さんですが、この役を演じようと決心されたきっかけは何か?

松村北斗:元々僕は『秒速5センチメートル』という原作アニメーションのファンだったというのがまず一つの理由で。そして、ご存知の方もいると思うんですけど、新海誠監督の『すずめの戸締まり』という作品で、僕が椅子の役をやったんですね。あ、改めまして、椅子です。そこで新海さんとの信頼関係があったというのも理由の一つ。でもこの二つだけではチャレンジするにはあまりにもハードルが高くて、難しい作品、そして役柄でした。
しかし、奥山監督と会話をする機会があって、そこで奥山さんが既に始めている実写版『秒速5センチメートル』というプロジェクトや熱意などを聞いていくと、僕ひとりが不安に思っていたとしても、そんなことは関係ないぐらい、ものすごいセンスと熱量で準備されていて。この方がリーダーになって進んでいく作品に乗っからないほど人生で惜しいことはないなと、その場で強く思いました。もちろん、この役に挑戦したいという気持ちがほぼ決まってからお会いしたのですが、“今すぐ早く撮りましょう”と言いたくなるぐらいの説得力をいただいて、それが最終的にこの作品に飛び込むことを決めさせてくれた出来事でした

--貴樹を演じるうえで大事にしていたことは?

松村:今回特に難しかったのは、自分が原作の大ファンであり、遠野貴樹というキャラクターやこの物語の世界に憧れていたので、この強い憧れから生まれるドキドキのまま飛び込むと、この世界を楽しむ自分になってしまって、生きることの難しさに苦しむ主人公とはかけ離れてしまうということでした。憧れるということを一切やめて、離れたところで遠野貴樹という人物を見つめ直すことがすごく難しかったです。
そして、もう一つ。今回、遠野貴樹という人物を、僕と青木柚くん、上田悠斗くんと、三人で一つの役を演じています。これがとても難しく思っていたのですが、僕よりも早くに撮影をしていた彼らのパートの映像を見たら、本当に素晴らしい俳優たちでした。彼らが役としての軸をぶらさずに持っていて、それを引き継いだことで、三人で一つの役を演じるということが難しいことではなくなり、とても頼もしくて、役として肉厚になるきっかけになりました。この二人がとにかく素晴らしかったということを、改めてこの会場の皆さんに伝えたいと思います。きっと上映が終わった後に、青木柚、上田悠斗、他の出演者についても、きっと名前を調べることになると思います

第30回釜山国際映画祭 公式上映前のGuest Visit(舞台挨拶)に登壇した実写映画『秒速5センチメートル』 主演・松村北斗と奥山由之監督

舞台挨拶後、松村と奥山監督も約3,800人のお客様と一緒に上映を鑑賞。
上映終了後、エンドロールが始まると、会場は盛大な拍手に包まれた。そして、エンドロールが終わると、松村と奥山監督は固い握手を交わし、熱いハグ。何度も観客にお辞儀をし、手を振り、感謝を表した。

オープンシネマ部門の上映を終えて、松村は「今は放心状態です。本当にあれだけのお客さんと一緒に作品を観たことで、自分も一観客として初めてあの作品を観られたような感覚があって。一体感というか、みんなでぐーっとあの作品の世界に集中して入っていく感じをすごく肌身で感じました。本当に貴重な経験をさせてもらえました。本当に素晴らしい作品になったなというのを実感しています」と興奮冷めやらぬ中、感想を述べた。

奧山監督は「スクリーンの大きさや、会場の熱気もあってか、こんなにのめり込んで観られるという状況はすごく幸せでした。特に釜山国際映画祭のオープンシネマで観るという、ある種の緊張感や高揚感も感じていて。本当は言葉にしなければいけないけれど、言葉にしきれない特別な時間でした。本編中で、ここっていうタイミングで突然自然の風を感じると、自分が今どこにいて、スクリーンとの境界線が分からなくなる瞬間みたいなものを感じて、かなり特別な体験でしたね」と語った。

第30回釜山国際映画祭 公式上映前のGuest Visit(舞台挨拶)に登壇した実写映画『秒速5センチメートル』 主演・松村北斗と奥山由之監督

《ストーリー》

1991年、春。
東京の小学校で出会った貴樹と明里は、互いの孤独にそっと手を差し伸べるようにして、少しずつ心を通わせていった。
しかし、卒業と同時に、明里は引っ越してしまう。

離れてからも、文通を重ねる二人。
相手の言葉に触れるたび、たしかにつながっていると感じられた。

中学一年の冬。
吹雪の夜、栃木・岩舟で再会を果たした二人は、雪の中に立つ一本の桜の木の下で、最後の約束を交わす。

「2009年3月26日、またここで会おう」

時は流れ、2008年。
東京で働く貴樹は、人と深く関わらず、閉じた日々を送っていた。
30歳を前にして、自分の一部が、遠い時間に取り残されたままだと気づきはじめる。
そんな時にふと胸に浮かぶのは、色褪せない風景と、約束の日の予感。

明里もまた、あの頃の想い出と共に、静かに日常を生きていた。
18年という時を、異なる速さで歩んだ二人が、ひとつの記憶の場所へと向かっていく。
交わらなかった運命の先に、二人を隔てる距離と時間に、今も静かに漂うあの時の言葉。

――いつか、どこかで、あの人に届くことを願うように。
大切な人との巡り合わせを描いた、淡く、静かな、約束の物語。

映画『秒速5センチメートル』 は全国東宝系にて2025年10月10日(金)公開
公式HPはこちらから

©2025「秒速5センチメートル」製作委員会

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